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人事異動とその可否

社会保険労務士は“労務管理”のみならず、“人事”のプロであることも知っていましたか?

そして、人事権とは各企業の裁量事項ではありますが、無茶苦茶な人事異動をしていいわけではありません。

■人事異動の種類

人事異動には大きく分けて5種類あります。

・配置転換→勤務内容や部署をへんこうすること。

・転勤→配置転換により勤務場所を変更すること。

・出向→元の会社にざいせきしたまま関係企業に移ること。

・転籍→元の会社との雇用契約を終了し関係企業と雇用契約を結ぶこと。

・役職の任免→部長や課長等の役職への任命、昇進、解任、降格。

■“包括的同意”が認められる条件

包括的同意・・・就業規則に定めてあれば、権利の濫用でない限り社員の同意がなくても転籍以外は業務命令として行うことができるということ。

1.人事異動権を就業規則に明記し、社員に周知していること。

2.人事異動を定期的に頻繁に行っていること。

3.採用時に社員との間で“職種を限定する”合意をしていないこと。

※ただし、近年は人事異動命令を拒否する社員も多く訴訟になったりもしていますので、個別に丁寧な説明をしておく必要があります。

■人事異動が認められないとき(基準と例)

1.業務上の必要性があるか否か→理由に合理性がない、前例もなしに急にその人を出向させるなどはNG。

2.社員の被る不利益大きいか否か→過去の人事異動に比べて、労働条件の処遇が著しく低い、人事異動によって介護・育児・通勤に大きな不利益が生じるなどはNG。

3.悪意や不当な目的、動機であるか否か→人事異動に至るまでの経緯や待遇などから本当の目的は退職勧奨と判断できる、労働組合活動をしているなどに対して嫌がらせや報復、差別が目的となっているような人事異動などはNG。

※合理性のある理由とは“労働力の適正な配置のため”や“社員の能力やお欲を引き出すため”で十分とされています。

■限定社員の移動は慎重に!

近年は勤務地や専門性を重視し職種を限定した“限定社員”も増えています。

そういっった限定社員を範囲を超えて移動させたい場合はどうしたらよいのでしょうか?

例えば、支店や部署の統廃合はあり得る話です。

その場合は、“労働条件の変更”になりますので、該当する社員と個別に新たに雇用契約を結ぶというプロセスが必要になりますのでご注意ください。