最近は「メンタル不全」が社会問題化し、休職制度と復職制度が注目を浴びています。
■休職制度
休職制度を設けるか否かは“会社の任意”です。
休職制度とは、「雇用関係を続けたまま一定期間労働の義務を免除する」制度のことであり、“私傷病”によるものを想定しています。
何故なら、業務上災害は労災保険が担当しますので。
休職期間は企業の体力や勤続年数に応じて1~6ヶ月にしている中小企業が多いです。中小企業には人員の余裕もありませんからね。
■休職期間における法的扱い
賃金→有給にするか無給にするかを決めます。なお、私傷病休業の場合は、健康保険に請求することで“傷病手当金”が概ね給与日額の2/3を最長18ヶ月受け取ることができます。
社会保険料と住民税→労災保険料と雇用保険料の負担義務は労働をしていないのでなくなりますが(保険加入は継続)、社会保険料(健康保険と厚生年金保険料)及び住民税の納付義務は残りますので、休職期間中の取扱い方法は決めておきましょう。例えば、期間中の保険料は会社が立て替えるのか否かということです。
有給休暇処理→勤続年数の長い方なら有給休暇の権利が最大40日になります。生活保障の意味合いからも有給休暇を使いたいと訴え出る社員のかたもいると思いますので、私傷病休業の場合の有給休暇の取り扱いも検討しておきましょう。
高額療養費の限度額適用→手術や入院をする場合は医療費の負担もバカになりません。あらかじめ、各保険者に“限度額適用”の認定証をもらってかかる医療機関に提出すると、高額療養費の基準額以上に達した時点から“現物給付”として治療を受けられます。
そうすれば、医療機関への支払いも軽くて済みますので、長期入院になりそうな方には教えてあげましょう。
■復職制度
私傷病明けの社員が復職するにあたっての判断基準もないと制度は片手落ちになります。
治癒の基準は「休業前の業務を通常通りに行うことが出来るか否か」がポイントになります。
メンタル不調休職者の場合は、いきなり通常業務への復帰は難しいと思いますので、短時間勤務等の“復職プログラム”を整備することも重要になってきます。
診断書の提出→復職にあたっては必ず医師による診断書の提出を求めましょう。
しかし、医師も患者に押し切られて甘い診断書を書くケースもあります。
念には念を入れ、産業医がいる会社は産業医の受診、そうでない会社は、会社が指定する医療機関の診察も受けさせ、診断書の提出を求めましょう。
産業医→労働者の健康管理について会社に対し指導や助言を行う医師であり、労働安全衛生法上、一定規模の事業場に配置することが義務付けられている医師のこと。
■退職についても定める
休職期間が満了した時点で治癒しなかった」場合は“自然退職”とする規定も入れておきましょう。きちんと明記しておかないと後々解雇か否かというトラブルに発展しかねません。
■メンタル不調者対策
当方でもメンタルケアの研修を承っています。
メンタル不調は非常に扱いが難しい病です。対応を誤ると当人の社会復帰を阻害してしまいます。
故に、会社からの一方的・硬直的な運用にせず、柔軟に対応できるようにコミュニケーションの取れる風通しの良い会社を目指しましょう。
また、厚生労働省からもメンタル不調社員の復職支援に関する手引書を出していますので参考にしてみてください。ホームページからダウンロードできます。
■治療と職業生活の両立を目指して
国の働き方改革のコンセプトには治療と職業生活の両立支援を後押しする狙いもあります。
私はこれこそが真のワークライフバランスだと考え、取り組み、研究しています。
今やメンタル不全のみならず、がん患者も多数いますし、何といっても予備軍まで含めたら、日本人の4人に1人いじょうは生活習慣病持ちです。
昔のように病弱な奴は要らないなんて切っていたら人手不足で倒産します。
彼らの能力を活かしながら事業を進める対策が中小企業にも求められます。
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