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現代社会の闇を先取りしていた「Ζガンダム」

■森口博子さんのデビュー曲として名高い主題歌の「水の星へ愛をこめて」のタイトルに捨ての意味が内包されている非常に社会的に意義あるアニメ作品。

 

機動戦士Ζガンダムは、機動戦士ガンダムの続編にあたるアニメで初演は1985年です。

舞台は、ジオン公国が起こした一年戦争から7年後の世界です。

このアニメはコンプライアンス的には問題があるので今の基準では再放送は難しいでしょう。

私は続編の世界観が気になり連休中に一気に50話を観ました。

描かれているのはまさに現代社会の抱えている闇です。

・手段を目的化し躊躇なく毒ガスや核攻撃等の大量殺戮と強化人間製造という人体実験を行うエリート主義者軍事集団のティターンズ。

・現場を統制できないし、現実から目を背け責任を放棄する無能な地球連邦政府の政治家や役人等の特権階級。

・自社の繁栄のために進んで死の商人となる軍需産業。

・理想は立派だが具体策がない抵抗組織のエゥーゴ。

・自分は黒幕に徹して世界を意のままに操ろうと目論む木星帰りシロッコ。

・あわよくば漁夫の利を得ようと機会をうかがう自称“シャアの女”の小悪党で旧ジオン残党の実施的指導者のハマーン・カーン。

彼らに共通するのは「エゴ」「保身」「権力欲」「無責任」「責任転嫁」「大人の論理」「権謀術数」「多数派工作」「プロパガンダ放送」等の“現代の社会や組織が抱えている闇”そのものです。

特に悪の組織として描かれるティターンズに関しては「目的達成の為ならば手段は選ばず」「戦いで相手を叩きのめすことが正義」と当初の目的とは異なるものが目的化。

その非人道的なオペレーションに異を唱える士官もいるが、上官は出世や権力欲にしか興味がなく諫言には耳を貸さない。

次第に良心を持った士官たちや一般市民から組織は見放され自滅していくという結果に終わる。

■現代社会に問かける人の在り方

現代のコンプライアンス基準では放映が難しいと言ったのは人権的に問題のある描写が多いからです。

・修正と言う名のパワハラ肯定(軍規を乱したものを躊躇なく平手打ちや殴打)。

・強化人間製造という名の人体実験及び容認発言(脳の記憶を書き換えたりして戦闘マシーンにすること)。

・精神崩壊の描写(主人公や強化人間の多くが精神の崩壊や破綻をきたす)。

・一部のキャラクターが発する女性蔑視発言。

・ストーカー気質丸出しのハマーン

・兵士を戦争の手駒・道具として利用するシロッコ。

・人心をまとめるために道化を演じるシャア。

 

しかし、良い面もある

・地球人と宇宙人という差別はあるが、現代社会のような人種差別はない。多様なルーツを持つ者が普通に暮らし、共通言語で会話する。

・能力があれば年齢や性別を問わずに戦士として活躍できる。

・組織として活動するためには私情に囚われることなく規律を重んじるという社会性の重要性。

・規律は重視しつつも主体的な行動は否定しない。

「良い面」の考え方を取り入れればこのアニメは組織を学ぶ上で大いに参考になると思われる。

アニメは大人になっても鑑賞に堪えうるか否かで存在できるか否かが問われると思う。

Ζガンダムを「組織論」として読むと新たな発見があります。

因みに、ティターンズとエゥーゴの掲げた理念は共に「環境破壊から地球を守ること」でした。

ただ、その方法が異なり拗れたのです。

理念やビジョンが共有されていなかったからティターンズは暴走し自滅したのです。

彼らの中にも優秀なパイロットは多数いましたからね。

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コメント: 1
  • #1

    マリーダ (金曜日, 24 9月 2021 09:41)

    強化人間は、障害者に対する人権侵害だと私は思っています。